多趣味な社会人のブログ

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なぜ大学の施設利用料は返金されないのか

 新型コロナウイルスの影響で、多くの大学ではオンライン授業が中心になり、大学生の大半はこの1年間まともにキャンパスに通っていないのではないでしょうか。

 ここで気になるのは、大学の授業料及び施設利用料の返還についてです。大学に通っている知り合い数人に聞いてみたのですが、 授業料や施設利用料が返還されたという話は聞きませんでした。私は2020年3月に卒業しているのでぎりぎりセーフでしたが、現役の大学生のことを思うと可哀そうでなりません。

 さて、本題であるお金の話をします。

 大学の授業料は文系で平均75万円、理系で平均110万円かかります。施設利用料は文系理系共に15~20万円が相場です。

 授業料についてはZOOM等を用いてオンラインで行われているため、返金されないのも理解できます。(授業の質は下がるかもしれませんが……)

 しかし、施設利用料についてはどうでしょうか。大学の教室や図書館、研究室等の設備を利用できないのに施設利用料が返金されないというのは納得がいきません。

 多くの学生は授業を受けて単位を取るだけではなく、図書館や研究施設、サークル活動を充実させる目的で通っていると思われます。その目的が果たされていないのに返金されてないというのはいかがなものでしょうか。

 レストランでフレンチのコースを注文したにもかかわらず前菜しか出てこないうえ、代金は全額支払うよう求められているのと同じ状況です。

 

 

 ここで学生と大学との契約について、法律的な切り口で考えてみます。

 学生側が大学に授業料および施設利用料等を払った時点で、契約は成立します。契約が成立したら、大学側はサービスを提供する義務が生じます。契約が履行されない場合、債権者(学生側)は債務者(大学)に対して損害賠償を請求することができます。

 ただし、債務者側に責任がない場合は損害賠償を請求することはできません。

 大学側に落ち度がある場合は、払った代金を返還するように請求できますが、今回の休講やオンライン授業は新型コロナウイルスのせいであり、大学側には責任がないため、返金を求めることは難しいでしょう。

 

 

 次に、経営の観点から考えてみます。

 私立大学の主な収入は、授業料および施設利用料です。そのほか、入学する際にかかる入学金や合格が決まった際に払う納入金があります。

 大学の性質上、1回入学すれば途中で退学や編入しない限り4年間通い続けます。入学さえしてくれれば、よっぽどのことがない限り4年間授業料を払ってくれるありがたい存在なのです。

 裏を返すと、授業料や奨学金以外の収入は国からの補助金以外ほとんどありません。海外の場合は、寄付文化が日本より根付いていることもあり、OBから毎年多額の寄付金が集められ、基金として運用されています。

 例えば、ハーバード大学は毎年約14億ドルもの寄付を集めます。さらに、ハーバード大学基金の20年間における運用成績は平均9.5%というから驚きです。わき道に逸れますが、ハーバード大学の学費は1年間で約5万ドル高額です。しかし、返済不要な奨学金が充実しているため、優秀な学生や経済的に余裕のない学生は奨学金を活用して勉学に励んでいます。実際、ハーバード大学に通っている学生の70%は給付型の奨学金を受け取っており、5人に1人は学費をまったく払わずに大学に通っているそうです。 

 ハーバード大学に限らず海外の大学の多くは基金を運用しているため、授業料収入が減少しても大学を運営することができます。

 日本の大学も授業料と補助金に頼らない学校経営を考えるべき時代にさしかかっています。日本人の半数以上が大学に進学するようになった今、大学の在り方をもう一度見直す必要に迫られているといえるでしょう。