【私が自転車競技を愛する理由】 1.複雑なゲーム性
いよいよ本日ブエルタ・ア・エスパーニャが開幕します。時差の関係で夜中の放送になるので、自転車ファンは3週間寝不足に悩まされることでしょう。今年のブエルタにはバーレーンメリダの新城選手が出場するので、大舞台での活躍を期待します。
ここで、私がなぜ自転車競技を好きになったのかを、数回にわたって紹介します。
私がロードレースにはまった一番の理由は、高度な戦略による各チームの駆け引きが面白い点です。自転車レースを個人戦と思っている人も多いようですが、ツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャといった有名なレースは、8人でチームを組んで出場します。その中で活躍するのは、チームの中で選ばれたエースと呼ばれる選手で、エースは各チームの状況や狙いによって1~3人選ばれ、他の選手は献身的にエースをサポートします。
ここから、各チームの狙いについて説明していきます。そもそも、ツール・ド・フランスのような有名なレースは、2~3週間にわたって行われます。その中で様々な賞が設定され、どの賞を狙うかは選手やチームによって異なります。ここでは、主な賞について説明します。
総合優勝
先ほども述べたように、主な自転車レースは2~3週間、21ステージにかけて行われます。21日間のタイムを合計したものが1番短かった選手が、総合優勝の座に輝きます。総合優勝は、最も栄誉ある賞だといえます。
ポイント賞
各ステージで獲得したポイントの合計が1番大きい選手が、ポイント賞の座に輝きます。中間地点とゴール地点にポイントが設定されており、それぞれ通過した順位に応じてポイントを獲得できます。主に平坦ステージを得意とするスプリンターがポイント賞を狙います。
山岳賞
ポイント賞と同様に、各ステージで獲得した山岳ポイントの合計が1番大きい選手が山岳賞に輝きます。山岳ポイントは山頂地点の通過順位に応じて獲得することができ、得られるポイントは登坂距離の長さや勾配によって異なります。主に山登りが得意なクライマーが山岳賞を狙います。
上記以外にも、25歳以下の選手のうち最も総合タイムが短かった選手に贈られる新人賞や、印象的な活躍を見せた人に贈られる敢闘賞など、レースによってさまざまな賞が設定されます。
先ほども説明したように、上記のどの賞を狙うかはチームによって異なります。
総合優勝を狙うチームは、各ステージの合計タイムで競うので、どのステージにおいても大きく遅れないことを目指します。アシストと呼ばれる選手がエースの風よけとなったり、ライバルの仕掛けを封じることによって、エースが遅れないよう献身的に働きます。
ポイント賞を狙うチームは、平坦ステージで1位になることを目指すので、レース終盤ではアシストの選手がトレインと呼ばれる隊列を組み、最後の数百メートル地点までエースを送りとどけます。トレインを組むことによって、エーススプリンターが余力を残した状態で最後のスプリントに臨むことができます。アシストの選手が位置取り良くトレインを組むことで、スプリンターが走りやすくなります。
山岳賞を狙うチームは、アップダウンの多い山岳ステージで、ステージ途中に数か所設定されている山頂地点にトップで到達することを目指します。そのために、レース序盤からアシストの選手が逃げのきっかけを作り、クライマーが逃げられる体制を整えます。
このように、各選手によって狙っている賞が異なり、アシストする選手の役割も異なります。各チームの思惑が交錯し、レースが動いていく面白さを楽しめるのが自転車レースの醍醐味だと思います。初心者の方がいきなりレース動画を見ても理解できないかもしれませんが、ロードレースには様々な賞が存在すること、すべての選手が1番にゴールすることを目指しているわけではないことを頭に入れると、レースを楽しめると思います。
次回は、レース展開について説明していきたいと思います。