ゴーンをすぐに解雇する日本、しないフランス
先日、日産のゴーン会長が東京地検特捜部によって逮捕された、という衝撃的なニュースが飛び込んできました。容疑は金融商品取引法違反で、役員報酬を過少報告していた疑いがあります。その後の取締役会で、ゴーン氏は会長職を解かれました。
私は、この一連の騒動を聞いて大きな違和感を感じました。それは、ゴーン氏が東京地検に身柄を拘束されたのが11月19日で、その3日後には取締役会が開かれゴーン氏が会長職、代表取締役から解任されたことです。ちなみに、取締役を解任するには株主総会を開催することが必要なため、取締役には名を連ねています。19日の身柄拘束では、ゴーン氏に金融商品取引法の容疑がかけられたにすぎません。この段階では有罪か無罪か分からないわけですから、推定無罪が適用されます。まだゴーン氏の主張すら明らかになっていないにもかかわらず、22日の取締役会では早々にゴーン氏の会長職解任を決めています。26日には、三菱自動車の会長職も解かれています。日本では、有名人が逮捕されると、容疑者をまるで犯罪者のように取り扱います。この状況は、ほかの先進国から見ると極めて異常な状態です。フランスのルノーは、ゴーン氏の会長職を解いていません。三菱自動車は、レピュテーションリスク(会社の評判を落とすリスク)をゴーン氏解任の理由に挙げていますが、日本市場の販売台数は全体の1割程度しかません。全販売台数の約半数を、ヨーロッパと北米での販売が占めるグローバル企業なのです。それならば、有罪が確定していないゴーン氏を解任する方がよほどリスクがあると思います。しかし、日本企業はグローバル企業であっても、どうしても国内市場に敏感になってしまう傾向があります。日本にだって、ゴーン解雇に違和感を持つ人はたくさんいると思います。マスコミの発表に踊らされて、ゴーンが悪人だと思っている勉強不足な人の評判まで保ちたいという方が、よほど非効率な判断であるのではないでしょうか。